それぞれの部屋と
オンライン空間でつくる“動きの景観”。
多視点多中心な集会を、
オンライン会議ツールを用いてひらきます。
第1回 5月13日
[全10回(不定期)]
当たり前のような顔をして、毎日おなじ部屋にいる。
当たり前のような顔をして、オンラインミーティングツール(以下 zoom)を使う。
突然ガラリと変わった世界に合わせ、すんなりと行動様式を組み替えられる自分に驚く。
慣れ親しんだはずの部屋は役割をかえ、この部屋と地続きにあるオンライン空間で人と会う。 場所によって使い分けられてきた時間と人格が融けてなくなってゆくような、新しい体験である。 これはどこか旅に似ている。 知らない土地に流れついた時、自分のふるまいが変わるように、 私は、「部屋とzoom」が生み出す未知に流れついた、と言えるのではないか。
はやくもSNSでは、「部屋とzoom」での実践の成果として、合意形成のあり方や、精神衛生上の心得、またカフェや飲み会、ラジオ的展開などが急速に発明され言語化・共有されるようになった。これはとても面白い状況だと思う。
これらの行為と知覚による成果が着々と築かれてゆく中で、ふと、ここに耕しうる余地があることに気づく。
既存のシステムの代替としてではなく、探索するための「部屋とzoom」、芸術の実践としての「部屋とzoom」の可能性について。
この状況が起こす感覚的な相互作用や、新たに強まる知覚についてを扱う、多視点・多中心な集会をつくることにした。
このイベントは、多視点多中心な集会・movingscape連続展の中に位置付けることにした。 movingscapeの根底にある、バラバラな視点の集合が起こす「眩暈」の感覚、皆のもちよりで曖昧さをつくる「無尽」の思想、と相性が良いと思ったからである。
1.それぞれの部屋を1~3台のデバイスでzoomにつなげ
2.独自の身体と、ゆらぎの余地をもちより
3.なにかをする(動きをみる、動きながらみる、動きをみられる、動きながらみられる)
4.自身の気づきを持ちかえる
それだけを10回やる。
10回の集会はすべて領域不問・参加自由とし、各回事前に顔合わせ飲み会をする。 そこでの雰囲気から、当日の抽象的なテーマや、ささやかな取り決めをつくることもある。
「部屋とzoom」つまり、
自身が存在する空間と、その地続きに生じる複数の場所の実践としてのオンライン空間。
この2つの空間への取っ掛かりとして、謎性の高い生き物、イカと蛸を置いてみたいと思った。
異化する空間 / イカの眼 / 周遊する群れ
オンラインにのばす凧 / 独立した複数の知性で探索する蛸 / 蛸の都市
2つの生き物が、イメージを膨らますための良いモチーフになりそうな気がしている。
私たちが普段、制作として 「絵」「彫刻」「身体」「記憶」「音」「関係性」などの未知と向き合うように、この「部屋とzoom」と対峙できたとき、
個別な行為の断続的な集まりは、movingscapeのエントロピーを増大させ、意味づけされる前の「局地的な今」を映し出すのではないだろうか。
野口竜平
1992年うまれ。芸術探検家。
武蔵野美術大学で版画とパフォーマンスアートを学び、早稲田大学探検部でコンセプチュアルな探検と創造的な登山、を経験したことから、同時代の制作や表現における両者の親和性を考えるようになる。2017年からは《「脱システム」な方法での世界への介入×「言語を超えた」水準での記述》を標榜し、それを芸術探検と名付ける。現在は、東西の漂泊民の技術や思想、定住民との関係性をリサーチしつつ、コロナ時代の芸術探検を思索中。
主な個展に
・タイヤひっぱり台湾一周無銭旅行の記述《芸術探検ポイント2-拉輪胎-》2019 / 台北尖蚪
・箱を介して世界を捉え直すこころみ《芸術探検ポイント1-箱!ホワイト》2017 / Art Center Ongoing
などがある。
また
大きなシステムを前提としない生活へのゆるやかな実践として、”好奇ティビティでつながる個”の発着点『芸術探検社』を立ちあげ、
・距離や時間への憧れ・思想の隔たりを扱う「トキメキ運送」
・都市空間にあそびをつくる、ふるまいのアナーキズム「都市あそび」
・動きの景観、もちよりの多視点多中心な集会「movingscape」
など複数の活動をプロジェクトベースでおこしながら、身体的で領域横断的な協働のあり方を探索している。
design/illustration: 鈴木健太
photo(top): 坂藤加菜